2016年11月19日

【オンライン法務部メールマガジン】2016年11月号/第51号/[事業承継をする上で重要な株式移転]

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2016年11月号 第51号 [事業承継をする上で重要な株式移転]

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[1] ご挨拶
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今年の秋、まだまだ暖かいですね・・・。今月号は、阿部尚武税理士からです。

編集/茂木


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[2] 事業承継をする上で重要な株式移転
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さて今回は、事業承継をする上で重要な、株式移転の概要をお話させていただきます。


事業承継は、後継者が先代の経営者から事業を引き継ぎ、引き続き事業を
発展継続させていくことです。事業承継には今後の方針の決定や後継者の育成など、
どれも時間がかかる問題が多いといわれています。事業承継については多くの事項を
検討し、十分な時間をかけて、慎重にかつ有効に進めていく必要があります。

その検討事項の中で、【所有の承継】という問題があります。所有の承継とは、
事業承継予定者に対して、その事業を含む企業、つまり株式の移転を円満に、
かつコスト(納税)を抑えて移転するかどうかが問題となります。ここでは事業承継のうち、
特に所有の承継〜株式の移転についてご紹介します。

まず、株式の移転を検討する際には、後継者が親族であるか否かで取られる手法が
変わります。中小企業庁の調査によると、20年前は後継者の65%が親族であった
のに対し現在は40%強程度となっています。逆に親族外の後継者は同35%であった


のが、現在では50%以上となっており、親族外の事業承継はもはや例外ではないこと


を示しています。

また親族と親族外とでは、株式移転の方法も異なってきます。親族に承継させる場合、


コストはなるべくかからない方法を選びますので、買収資金が必要ない相続・贈与の
方法を検討します。よって節税対策及び納税資金の準備が重要になります。

他方、親族外への承継は買収資金が重要です。企業が買収する場合は別として、
例えば従業員へ譲受する場合などは、いかに買収資金を用意するかが鍵となります。
また買収資金は高額である場合が多いので、節税対策も重要な要素となります。

※後継者別に見る株式移転方法
1.親族の場合
@ 相続
A 贈与
B 後継者による譲り受け
C 買収(M&A)

2.親族外の場合
@ 贈与
A 後継者による譲り受け
B 買収(M&A)

なお、譲受とM&Aの違いは、対価を支払う点は同じですが、承継後の経営者を
先代が指名する点が異なります。買収の場合は、事業を買収する企業が経営者を
指名します。ですので、事業譲渡後の先代の関与が薄くなる、もしくは無くなることが


特徴です。また婿養子や養子縁組など、第三者であっても親族的な事業承継の手法
もよくみられます。

株式移転方法の特徴について、後継者が親族である場合と親族外である場合を
比較しながら見てみましょう。

※後継者別に見る株式移転方法
1. 相続
親族向け、親族外はできません。養子縁組をすれば親族外でも可能。非後継者との
調整が課題です。

2. 贈与
親族、親族外でも可能。高額の納税資金が必要。また税制適格であれば親族外でも
納税猶予の適用可能です。

3. 譲受
親族、親族外でも可能。譲渡価額が高額の場合は資金調達を同時に考える必要が
あり、譲受資金の確保が課題となります。

4. 買収
親族、親族外でも可能。先代の威光が届きにくくなることが特徴です。また買収は
第三者が多く絡んでくるため時間がかかる場合があり、一定以上の売却価額でないと
買収そのものが進まない場合があります。
親族でも可能な手法ですが、その場合敵対的もしくは救済的な買収になることが
多いようです。

また、どの方法によっても課税の問題は必ず発生することも忘れてはいけないポイントです。
相続・贈与の場合は後継者に課税が発生しますが、事業譲受・買収は先代に課税が発生します。

相続・贈与に関しては課税の問題もありますが、相続そのものにも問題が生じます。
それは、後継者と非後継者との間の相続分の問題です。特に遺留分の問題については、


民法の特例としての法制度や金庫株等の制度が整備されていますので、これらの制度と


合わせて検討を進めていきます。

他方事業譲受及び買収は、原則として第三者と金銭にて解決を図りますので、親族間の


トラブルは回避できます。また、課税関係は原則として先代に生じますが、株式の譲渡


だけでなく退職金制度や取締役等に残り、会長職として給与を得る方法などと合わせて、


税負担の問題と買収価額の資金調達の問題を解決していきます。


執筆: 阿部尚武税理士事務所 代表 阿部尚武
http://www.abekaikei.com/


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2016年10月20日

【オンライン法務部メールマガジン】2016年10月号/第50号/[国際契約と仲裁のメリット・コスト]

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2016年10月号 第50号 [国際契約と仲裁のメリット・コスト]

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[1] ご挨拶
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今年の秋、ゆっくり深まる感じでしょうか・・・。今月号は、石下雅樹弁護士からです。

編集/茂木


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[2] 国際契約と仲裁のメリット・コスト
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(1)国際契約と仲裁合意
 読者の皆さんの中には、海外の会社の製品を輸入したり、海外の技術やサービ
スを使うなどのため、国際取引契約を締結する機会を持つことがあるかもしれま
せん。
 そして、紛争が生じた場合の解決方法として、管轄裁判所を合意するケースの
ほか、「仲裁合意」をしておくケースもよく見られます。
 仲裁合意規定の典型例としては以下のようなものです(日本商事仲裁協会のウ
ェブサイトから引用)。
  All disputes, controversies or differences which may arise between
  the parties hereto, out of or in relation to or in connection
  with this Agreement shall be finally settled by arbitration in (name of
  city), in accordance with the Commercial Arbitration Rules of
  the Japan Commercial Arbitration Association.

 この契約からまたはこの契約に関連して、当事者の間に生ずることがあるす
べての紛争、論争または意見の相違は、一般社団法人日本商事仲裁協会の商
事仲裁規則に従って、(都市名)において仲裁により最終的に解決されるも
のとする。
 ここで、国際契約で紛争解決条項を選択するのが妥当なのか、またどのように
定めるかを判断するにあたり、「仲裁」の意味を理解しておくことは重要といえ
ます。そこで本稿では、仲裁についてのアウトラインとコストを簡単に解説します。

(2)仲裁とは
 仲裁とは、当事者が、私人である第三者をして争いを判断させ、その判断に服
することを合意し(これを「仲裁合意」といいます。)、その合意に基づき紛争
を解決する制度です。
 しかしこの「仲裁」の制度は単なる私人間の話合いや示談とは大きく異なる特
徴があります。それは、この仲裁人の判断(「仲裁判断」)には、裁判所による
確定判決と同一の効力が認められているからです(仲裁法45条)。従って、仲
裁判断に基づき、裁判所の強制執行手続を取ることができるわけです。
 もっとも、契約書の中で仲裁合意を定める場合、単なる一個人を仲裁人として
契約書に書く例はほとんどありません。むしろ、多くの場合、どの都市を仲裁地
とするかや、仲裁人選任の方法・手順を規定します。後者については、どの仲裁
組織のルールを選択するか、を記載します。例えば日本なら日本商事仲裁協会が
ありますし、ほかに香港国際仲裁センター(Hong Kong International Arbitration
Centre)、シンガポール国際仲裁センター(Singapore International Arbitration
Centre)などは有名な組織です。

(3)国際仲裁の利点〜執行可能性
 また、国際紛争において、ある国の裁判所で出された判決は、当然に外国で執
行(差押)できるわけではありません。それで、外国の会社に対し日本で訴訟を
起こし、日本で勝訴判決を得たものの、その外国会社が日本に執行(差押)でき
る財産を持たず、外国にある財産を差し押えなければ回収できないというような
ケースで、このことは重大な問題となりえます。
 実際、日本の判決については、中国、タイ等では原則として執行ができないと
解されています。
 他方、仲裁については、世界の148の主要国がニューヨーク条約(外国仲裁判
断の承認及び執行に関する条約)に加盟しており、ニューヨーク条約加盟国どう
しは、外国における商事仲裁についての仲裁判断が、他国の裁判所によって承認
され、執行することが可能とされています(ただし実務上は国ごとに別途検討が
必要です)。
 例えばアジア諸国については、韓国、中国、香港、シンガポール、タイ、ベト
ナム、フィリピン、マレーシア、カンボジア、インドネシア、インド、バングラ
デッシュ、等が加盟国です。
 他方、アジアでは、台湾、北朝鮮、モルディブ、パプアニューギニア等は未加
盟です。ただし台湾は国内の仲裁法で外国仲裁判断の承認についての整備がされ
ています。

(4)仲裁のコスト
 また、一般に仲裁制度については、上の利点に加えて、当事者が仲裁人や仲裁
機関を選ぶことができること、迅速性や、非公開であることなどのメリットがあ
るとされており、国際契約において仲裁合意は頻繁に見られます。
 ただし、仲裁制度について考える必要があるのはコストの問題です。
 というのは、仲裁手続に必要な以下a〜cの費用は、すべて当事者が負担する
のが原則だからです。これに比べ、裁判手続では、bについて当事者が負担する
のは当然ですが、aとcについて当事者が負担する部分は通常わずかです。その
ため、仲裁においてはコスト負担が大きくなるわけです。
  a 仲裁廷の費用(仲裁人の報酬・費用、仲裁廷が選任した鑑定人報酬など
    審理に要する費用)
  b 当事者の費用(代理人の報酬、資料収集の費用、私的鑑定費用、仲裁場
    所への交通費や滞在費などを含む仲裁手続を遂行するための費用)
  c 仲裁機関の管理料金、その他仲裁手続のための合理的な費用(会議室、
    通訳、速記者等の費用)

(5)仲裁のコストの具体例
 具体例として、日本商事仲裁協会(JCAA)と国際商業会議所(ICC)に
ついて取り上げてみます。
 日本商事仲裁協会の場合、紛争による請求金額または請求の経済的価値が20
00万円というケースでは、管理料金が54万円、仲裁人報償金は「時間単価/
仲裁人1名×仲裁手続に要した時間」をベースに上限額(2000万円×10.8%=
216万円)の範囲内で決まるとされています。また時間単価は3〜8万円までの
範囲とされています。ただし、上の費用には、代理人弁護士の費用や当事者の費
用は含まれていません。
  参考:https://www.jetro.go.jp/world/qa/04C-070308.html

 他方、国際商業会議所の仲裁費用については、費目は同様ですが、例えば訴額
が20万ドル程度、仲裁人が一人の場合、仲裁人報酬が平均で1万4600ドル
程度(ただし最大で2万3479ドル)、仲裁機関の管理費用が7895ドルと
なっています(以下のサイトで算定)。
  http://www.iccwbo.org/Products-and-Services/Arbitration-and-ADR/
  Arbitration/Cost-and-payment/Cost-calculator/

 それで、係争額が小さい(億未満の単位のもの)ことが想定される契約は、仲
裁には不向きかもしれませんし、係争額が10億円未満であることが想定される
契約は、仲裁人を一人とする仲裁規定を検討することが必要かもしれません。
 仲裁規定の選択や書き方においては、上のように、想定される係争額やコスト
も加味して検討する必要があると思われます。


執筆: 弁護士・弁理士 石下雅樹
     http://www.ishioroshi.com/


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2016年09月15日

【オンライン法務部メールマガジン】2016年9月号/第49号/[労働基準監督署からの調査があったら]

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2016年9月号 第49号 [労働基準監督署からの調査があったら]

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[1] ご挨拶
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やっと涼しくなりましたね・・・。今月号は、山本喜一社会保険労務士からです。

ちなみに・・・。当メルマガにて既報の「株主リスト」ですが、10月1日から施行ですね。
詳しくは、法務省のホームページから。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00095.html

編集/茂木


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[2] 労働基準監督署からの調査があったら
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突然、労働基準監督署からの連絡がきたら、びっくりしますよね。
何度か経験があっても、どきどきしますし、
初めての方はどうしてよいのかわからないことと思います。

労働基準監督署の調査を、「臨検(りんけん)」と言います。
これには種類があり、「定期監督」と「申告監督」があります。
文字を見て頂けるとイメージできるかもしれません。
わかりやすく言うと、定期監督は、運よく(?)抽選に当たったとき、
申告監督は、誰かが労働基準監督署に「僕、こういう会社で困ってるんです」など
と相談があったときです。
申告監督には、匿名での相談のときと、実名での相談のときで、
調査に関する力の入りようは違います。

さて、なんとなく調査の種類がわかったところで
実際に調査がきたら、どうしたらよいのでしょうか。
結論としては、
@「余計な事は言わない」、A「真摯に対応する」の2点です。

@「余計な事は言わない」
物事を隠すわけではないですが、労働基準監督官もわかってしまったら
言わないわけにはいかないので、あれこれと話をしているといろいろと出てきてしまう

ことがあります。また、気付いても現実的に難しいことを言わないこともあります。
うまく取り繕うというような必要はありませんが、
基本的には聞かれたこと以外はあまり言わない方が良いことが多いです。

A「真摯に対応する」
労働基準監督官も人間ですので、良い関係を築くことが重要です。
テクニック的なこともありますが、人間と人間のやりとりですので、一番大切なのは
真摯に対応することです。
用意できる書面はきちんと用意をして、間に合わないものについては事前に
「その日には間に合いそうにありません。日を伸ばしたりできますか、
または一部足りなくても大丈夫ですか」などと相談をして、
当たり前の普通の連絡、対応をすると良いです。

労働基準監督官は、「敵」ではありません、また労働者の味方でもありません。
ただ、会社が労働基準法などを守っていないと「ここを直さないとね」
と教えてくれる存在です。
まれにですが、言いがかり的に聞こえてしまうこともあります。
そういう場合は、会社の考え方や法的な合理性を説明する必要があるときもあります。


調査をされるのは、良い気持ちではないですし、
「ここを直さないとね」となると「是正勧告書」、「指導票」というものが出されます。

そうすると、確かに手間や出費もありますが、
今後の会社の発展のために、労務関係の整備は必須ですので
事が大きくなる前に、無料でチェックをしてくれたと前向きにとらえましょう。


執筆: 社会保険労務士法人日本人事 代表社員 山本喜一
     http://www.sr-jhr.com/



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