2016年04月21日

【オンライン法務部メールマガジン】2016年4月号/第44号/[種苗法による新品種の保護]

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技術系・ITベンチャーの実務に役立つ法律・知的財産情報
2016年4月号 第44号
テーマ [種苗法による新品種の保護]

発行 オンライン法務部 http://www.motoffice.jp/olld.index
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[1] ご挨拶
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今春は、いろいろと荒れていますね・・・。それでは、第44号です。
今回は、石下雅樹弁護士からです。

編集/茂木


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[2] 種苗法による新品種の保護
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(1)育成者権とは
 作物の品種改良は、古くから行われてきた技術であり、品種改良の結果生じた
新しい品種の農作物、花、植物に関して、登録によって一定の独占権を持つ権利を
育成者権といいます。知的財産権の中でも比較的馴染みが薄いと思われる
「育成者権」ですが、読者の方々の中には農業に従事したり関心のある方、
又は何らかの形で農業や農産物とコラボレーションしたビジネスを行っておられる方も

少なくないと思われます。

 そこで以下、この「育成者権」のアウトラインをご紹介します。

(2)育成者権の対象
 種苗法の保護対象となるのは「農林水産植物」、つまり、栽培される全植物
(種子植物、しだ類、せんたい類、多細胞藻類)と、政令で定める植物
(現時点はキノコ)とされています(種苗法2条1項柱書)。
 ここで留意すべきなのは、種苗法の保護対象は、現実に育種された「植物体」
それ自体であり、その栽培法といった技術思想ではないという点です。
この点は「技術思想」を保護する特許や実用新案と大いに異なる箇所です。
 それで、「植物体」それ自体ではなく、育種方法や新品種の育種増殖方法等
といった「方法」や新品種育成に有用なDNA等の育種に関する関連技術は、
「発明」として特許法による保護を検討することになります。

(3)「区分性」
 育成者権の保護の対象となるか否かの重要なキーワードとして「区分性」という
ものがあります。この「区別性」とは、品種登録出願前に日本国内又は外国において
公然知られた他の品種と、特性(2条2項)の全部又は一部によって明確に区別
されることをいいます。つまり、既存の品種と変わらないような「新品種」に独占排他権
を与えることは適切ではない、という趣旨です。

(4)「均一性」「安定性」
 また「均一性」という要件もあります。「均一性」とは、ごく簡単にいえば、「播いた種
から同じ品種の植物が生育できること」ということです。「安定性」という要件もあります。
これは、「何世代増殖を繰り返しても同じものができること」という要件です。
 なお、上の「均一性」の要件は、独立行政法人種苗管理センターによって行われる
栽培試験(15条)で確認されますが、異形固体の出現率が原則として3%以下で
あることを要するとされています。

(5)ビジネス上の留意点
 以上、育成者権のごく大雑把なアウトラインを申し上げました。

 植物の品種改良は、農作物における新たなブランド創出の鍵としても期待されている

ものです。もちろんこの権利は、直接は農業生産者・栽培者に関係するものですが、
ブランド創出にあたっては、栽培者だけでなく、流通、加工、販売、サービス提供といった

商流にある事業者が加わり、商標や地域ブランドといった他の権利と、また他のノウハウと
組み合わせて事業を推進していくことが少なくありません。
 農業生産者だけでなく、他の事業者の方々も、いざという場合に権利保護の
武器となるよう備えるべく、種苗法による育成者権のアウトラインを知っておくのは
有益と思われます。

執筆 弁護士・弁理士 石下雅樹
    http://www.ishioroshi.com/


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