2015年06月18日

【オンライン法務部メールマガジン】2015年6月号/第34号/[プロダクトバイプロセスクレーム]

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技術系・ITベンチャーの実務に役立つ法律・知的財産情報
2015年5月号 第34号 
テーマ [プロダクトバイプロセスクレーム]

発行 オンライン法務部
http://www.olld.jp/
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[1] ご挨拶
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梅雨ですね。涼しくて助かります・・・。とりあえず、第34号です。

今回のテーマは、廣瀬弁理士から
「プロダクトバイプロセスクレーム]についてです。

編集/茂木


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[2] プロダクトバイプロセスクレーム
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(1)はじめに
6月5日に,「プロダクトバイプロセスクレーム」に関する最高裁判決が出され,新聞等でも紹介されています。
では,プロダクトバイプロセスクレームとは,何を意味し,実務においてどのような影響があるのでしょうか。
本稿では,上記の事柄をわかりやすく解説したいと思います。
 
(2)プロダクトバイプロセスクレームとは
発明は,大きく分けて2つのカテゴリーに分類されます。
一つは,物の発明であり,残りは方法の発明です(なお,方法の発明は更に2つに分類されます)。
物の発明がどのようなものであるかは,物の構造や物性などといった要素を用いて明確にし,
方法の発明はどのような工程を含むのかを用いて明確にします。
簡単に説明すると,物の発明は,時間の要素が含まれず,方法の発明は工程を用いて特定するので
時間の要素が含まれます。
たとえばある請求項の最後が,「・・・方法」となっていれば,その請求項は方法の発明に関していて,
最後が具体的な物(・・・装置,システム,化合物など)となっていれば,その請求項は物の発明に関します。 

上記のように,物の発明は,物の構造や物性などを用いて明確にするのが原則なので,

物の発明に対して,製造工程など時間の要素を加えても,原則として新規性や進歩性を審査する段階
においては考慮されません。

ですが,例えば,同じ原料を用いても作り方によって料理の味に大きな違いがあることはよく知られている
と思います。
有名シェフと,素人の主婦では,同じ原料を用いても 出来上がった料理は,味が全く違うのですが,
物としてどのように違うから味が異なるのか,これはただちにはわかりません。
 
上記のように,物(料理)を作る工程がことなるので,味が違うものができるのだけれども,
物として何が違っているから味が異なるのか,必ずしもわからないものがあります。
でも,有名シェフの料理は,圧倒的においしいのです。
  
この場合,実務では,請求項は,料理(物の発明)に関するのですが,
調理工程という時間の要素を用いてその料理を特定することで,主婦の料理と区別することがあります。
 
このように,物(プロダクト)の発明について,製造工程(プロセス)を用いて特定した請求項(クレーム)が,
プロダクトバイプロセスクレームです。
 
(3)問題点
特許権の範囲(「特許発明の技術的範囲」とよびます)は,請求項に基づいて規定します。
プロダクトバイプロセスクレームは,物の発明であるにもかかわらず,工程を用いて特定されています。
特許権の範囲を定めるにあたって,工程が考慮されるのか
(つまり請求項に記載された工程とおりに作られた物でなければ侵害しないのか),
それとも,請求項に記載された工程と異なる工程で製造された物であっても侵害とされるのかについて
これまで様々な判決があり,議論されていました。
 
(4)最高裁判例(最高判平成27年6月5日判決,事件番号平成24年(受)第1204号)
この事件の対象となった請求項は以下ものです。

「次の段階:
a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し,
b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し,
c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し,
d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え,そして
e)プラバスタチンナトリウム単離すること,
を含んで成る方法によって製造される,プラバスタチンラクトンの混入量が0.5重量%未満であり,
エピプラバの混入量が0.2重量%未満であるプラバスタチンナトリウム。」

つまり,請求項は,「プラバスタチンナトリウム」という物の発明なのですが,
その物の発明を特定するためa)〜e)の段階(工程)が用いられています。
この特許権は,a)〜e)の段階(工程)を用いて製造された特定のプラバスタチンナトリウムだけにしか
及ばないのか,
a)〜e)の段階(工程)を用いて製造されていなくても,特定のプラバスタチンナトリウムについては
この特許権を侵害することがありうるのかが問題とされたのです。
 
結論は,a)〜e)の段階(工程)を用いて製造されていなくても,
特定のプラバスタチンナトリウムについてはこの特許権を侵害することがありうるというものです。

つまり,最高裁は,
「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっても,
その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として
確定されるものと解するのが相当である。」
と判示したのです。

「当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物」が,どこまでのものを意図するのか
必ずしも明確ではありませんが,
この最高裁判決は「発明者に広い権利を認めることになる」などという判断をされている方もいらっしゃるようです。

ですが,最高裁判決をよく読むと,さらに実務上重要な事柄が判示されています。
最高裁判決は,
「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,
当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に
適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが
不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である。」
と判示しています。

つまり,プロダクトバイプロセスクレームは,原則として不明瞭であり(拒絶や無効となります),
「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又は
およそ実際的でないという事情が存在するときに」限って,認められるというものです。


(5)まとめ
上記のとおり,プロダクトバイプロセスクレームは,
製造工程によらず「当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物」まで
権利範囲が及ぶことが明らかになりました。

一方,プロダクトバイプロセスクレームは,「出願時において当該物をその構造又は特性により
直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに」限って,
認められることとなりましたので,これまでのように安易に製造工程を用いて物の発明を特定すると,
拒絶されたり,特許が無効となってしまうおそれがあるといえます。
 
現実には,プロダクトバイプロセスクレームで特許されたケースは多々存在していますので,
「当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物」がどの範囲までを意図しているのか,
「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが..およそ実際的でないという事情」とは
どのような事情なのかについて,今後の判例の動向に注目する必要がありそうです。


執筆: 廣瀬国際特許事務所 代表
     弁理士 廣瀬隆行
     URL  http://www.hirosepatent.jp/


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