2018年12月20日

【オンライン法務部メールマガジン】2018年12月号/第76号/[外国で知的財産を取得する]

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技術系・ITベンチャーの実務に役立つ法律・知的財産情報
2018年12月号 第76号 [外国で知的財産を取得する]
発行 オンライン法務部 http://www.motoffice.jp/olld.index
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[1] ご挨拶
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冬らしくなってきましたね・・・。

今月号は、廣瀬隆行弁理士からです。

編集/茂木


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[2] 外国で知的財産を取得する
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1.はじめに
特許権や商標権などの知的財産権は、国ごとに発生します。ある発明を、いろいろな国
において特許権で守ろうとすると、複数の国で特許権を取得する必要があります。
会社名や商品名についても、海外進出をしようとしたら、その国で他人が商標権を取得
していたということは良く起こります。
以下では、海外での特許化について説明します。

2.外国出願の期限
外国への特許出願は、通常、最初の出願(日本出願)から、1年以内(優先期限)に
行ないます。外国への特許出願には、特許協力条約(PCT)に基づく国際出願を行う
ルートと、各国や領域に出願するルートがあります。ただし、日本の出願の際に新規性
喪失の例外の申請をしている場合は、既に権利化できなくなっている国が多いので
留意が必要です。

3.外国出願について
(1)直接外国出願を行う場合
出願する国が全て英語での出願を受け付ける場合であっても、通常英文翻訳文の
作成に1ヶ月強かかります。ですから、優先期限から2ヶ月程度前にまでに権利化したい
国を決めると比較的スムーズに外国出願を行うことができます。
出願する国が英語以外の言語を要求する場合は、通常、英語による翻訳文を作成した
後に、現地の代理人に翻訳を依頼し、出願します。現地の言語の翻訳にもさらに1ヶ月
程度かかります。よって、これらの時間を考慮する必要があります。

(2)PCTに基づく国際出願を行う場合
PCT出願は、日本語で行うことができます。日本での出願の内容をそのままPCT出願
することもできます。しかも、1件の出願で、PCT加盟国全体に出願したかのように
扱われます。PCT出願は大変便利です。ですが、PCT出願自体では、特許権を取得する
ことはできません。通常、最初の日本出願から2年6ヵ月以内に、権利化したい国の
特許庁などに出願しなおす作業(移行作業)が必要となます。その後、各国で改めて
審査が行われます。また、例えば、台湾などはPCTに加盟していないので、台湾などで
権利化したい場合は、台湾へ直接出願する必要があります。PCTの加盟国は特許庁が
一覧表を準備しています。
PCT出願をしますと、特許を取得できるか否かのレポート(国際調査報告・国際調査機関
の見解書)が発行されます。このレポートをみることで、費用のかかる各国での権利化作業
を行うか否か決めることができます。

4.欧州出願
欧州の国々については、直接出願したり、PCT出願に基づいて各国へ移行することも
できます。また、欧州特許条約(EPC)に基づいて権利化を目指すこともできます。
EPCは、PCTと異なり、EPC出願自体が特許されます。特許された後に、権利化したい
国ごとに必要書類を提出することで、各国で特許を取得できます。
PCT出願の移行期限内(最初の出願から31ヶ月以内)にEPCルートへ移行することも
できます。PCT出願をEPCへ移行した出願をEuro−PCT出願と呼びます。
以下では、Euro−PCT出願について説明します。
 
PCT出願を欧州に移行すると、拡張調査報告(EESR)と見解書が出されます。見解書で、
特許を取得できない理由(拒絶理由)が通知されている場合は、出願人は、意見書や
補正書を提出して反論することができます。応答期間は、この見解書が公開されてから
6ヶ月です。
意見書や補正書を提出しなくても、直ちに出願がだめになることはありません。また、
この見解書で、特許が取れそうという場合は、出願人は反論する必要がありません。
出願人が審査を進めることを希望する場合は、その旨を欧州特許庁に伝えるとともに、
必要な料金を支払います。すると、欧州特許庁(EPO)は、EESRや見解書、出願人の
反論などを考慮して、審査を行い審査報告を作成します。その審査方向に対して、
出願人は、意見書や補正書を提出して反論することができます。それでもEPOが
特許査定してくれないときは、口頭審理を請求することや、審判を請求することもできます。

欧州出願は、特許になる前も維持年金がかかります。その額は比較的高額です。また、
出願の際の料金は、審査をお願いする際の料金も比較的高額です。

EPOが特許査定を通知した後、3ヶ月以内に、特許料を納付するとともに、特許請求の
範囲のフランス語とドイツ語の翻訳文を提出する必要があります。すると欧州特許が
公告され、特許権が付与され、欧州特許が成立します。その後、3ヶ月以内に、特許を
維持したい国へ移行する手続きを行う必要があります。手続きに必要な書類は、国に
よって異なります。また、特許請求の範囲のみの翻訳文を要求する国や、明細書全体の
翻訳文を要求する国もあります。翻訳文の要否については、ロンドン協定で定められて
います。

5.その他
外国出願は、一般的に多くの費用が掛かりますので、東京都などの特定の自治体や、
JETROなどは、出願費用の半額を助成する助成金事業を行っています。
外国出願だけ他社に譲渡するといったことも可能です。ある有益な発明をした場合は、
優先期限や移行期限より前に、興味のありそうな企業に、特定の国の権利だけを売って
しまうといった方法もよく行われています。
外国出願をして特許権を取得するだけでは、費用対効果が必ずしも高いとは言えない
かもしれません。
                                                  

執筆: 廣瀬国際特許事務所 代表
弁理士 廣瀬隆行
URL http://www.hirosepatent.jp/




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